東京高等裁判所 昭和45年(行ケ)35号 判決
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〔判決理由〕(本件審決を取り消すべき事由の有無について)
二 原告は、本願発明と第一引用例および第二引用例は、その構成および作用効果において格段の差異があり、この両引用例から本願発明を容易に推考しうるものでないと主張するが、この主張は、理由がないものといわざるをえない。すなわち、
(一) 本願発明の特許公報の明細書によると、本願発明の要旨は、明細書の「特許請求の範囲」の欄記載のとおり、「機体の一部に収穫物などを搬送する送りベルトを設け該送りベルトの一側端下方に支持板を介して篩線を斜設し該篩線を収穫物などが一定量蓄積したとき適宜の手段を介して自動下降するとともに下降後は再び元位置に自動上昇するようなすことを特徴とする収穫機などにおける収穫物など自動集積装置」にあるものと解せられ、前記明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載によると、本願発明は、「本装置を刈取機、刈取脱穀機、草刈機、馬鈴薯収穫機などに設置することにより刈取物、収穫物を走行しながら自動的に一定場所に集積し、収穫物などの結束を容易に行なうこと」を目的とし、また、本装置は、「稲麦などの収穫物あるいは刈取脱穀藁稈などを本機の作業進行中にすべて送りベルトから篩線上に集合して一定量に達したときは自重によつて篩線が自動的に下降し開口するようになす装置であるため装置する本機の後方または横方に常に定間隔をおいて収穫物などを集積しておくことができ、後の結束や収納の作業をきわめて容易に行えるようなすことができ、篩線の開閉操作は自動的に行われ、……収穫などの作業がなんら支障なく確実に行われる。」という作用効果を奏するものであることが認められる。一方、前記争いのない事実によると、本件審決は、(1)機体の一部に収穫物を搬送する送りベルトを設け、該送りベルトの一側端下方に本願発明の篩線に該当する支承片を斜設し、該支承片を適宜の手段を介して自動下降させるとともに下降後は再び元の位置に自動上昇させるようにした収穫機における自動集積装置は第一引用例により従来公知であり、また、(2)本願発明の篩線に相当する支受杆をそれに収穫物が一定量蓄積したとき自重により自動下降させるようにしたものは第二引用例により従来公知であるから、これら引用例より本願発明は必要に応じて当業者が容易に発明しうるものとしたことが明らかである。
(二) しかして、原告が本願発明と第一引用例との相違点として指摘するところは、本願発明の場合は、篩線に収穫物が一定量蓄積したときはじめて降上するのに対し、第一引用例の場合は、本願発明の篩線に相当する支承片は収穫物の量とは無関係に一定の周期で昇降する点で差異があるというのであるが、本件審決が第一引用例に開示されている技術思想として引用した事項は、前記認定のとおりであつて、右原告指摘の点を含まないものであり、右指摘の点については、本件審決は第二引用例により公知であるとしているのであるから、原告の右主張は採用するに由ない。
次に、原告主張の本願発明と第二引用例の相違点について考えるに、本願発明の特許請求の範囲の記載は、前記認定のとおりであり、これによると、本願発明において、篩線上に収穫物が一定量蓄積したとき、篩線が自動下降するための具体的手段については、「適宜の手段を介して」とあるのみで何らこれを限定する記載はなく、また、前掲明細書の「発明の詳細な説明」欄の記載からもこの点を特に限定して解すべき根拠はない。もつとも、明細書中「発明の詳細な説明」欄および図面記載の実施例は、原告主張の構成および作用を有するが、前記認定の特許請求の範囲の記載および本願発明の目的、効果に照らすと、これは文字どおり一実施例にすぎないものというべきであつて、自動下降の具体的手段を原告主張のようにことさら限定したものと解することはできない。
また、第二引用例の特許発明明細書によると、第二引用例の稲麦刈機は、支受杆上の稲束または麦束が一定の量となつたとき、その自重により支受杆を自動的に下方に擺動させて一定量の稲束または麦束を地上に放出せしめるようにした構成(なお、この支受杆が本願発明の篩線に相当するものであることは、右の構成および作用に徴し明らかである。)のもので、その目的ないし作用効果とするところは、刈り取つた稲または麦を集束結縛するのに適当な量あて纒めて地上に順次放出させ、稲刈または麦刈後の後処理に便ならしめ作業能率を増大させることにあること、その実施例として記載のものも、支受杆(固定支受杆と擺動支受杆よりなる。)上の「稲束又は麦束の重量が増す時は弾機の牽引力に打ち勝ちて腕片が下方に擺動す。若干下方に擺動する時は弾機が再び作用し腕片を急速に下方に牽引擺動せし」める旨の明細書中の記載に徴すると、支受杆上に蓄積された稲束または麦束の重量により擺動支杆がある程度下降するが、そのとき弾機が再び作用して擺動支受杆が急速に下向し、稲束または麦束を地上に放出する構成のものと認められるから、原告主張のように、第二引用例のものが、本願発明と作用効果を異にし、藁束を連続的に放置するようなもので実用性がないものとすることは到底できない。
してみれば、原告のこの点の主張は、本願の発明の要旨を誤つて限定的に解釈し、さらに第二引用例の構成および作用効果をも誤認した結果に基づく主張というべきであつて、審決認定の技術思想は第二引用例に十分開示されているものとみるべきであるから、右原告の主張も採用することができない。
(三) 以上説示したところからすると、本願発明は、審決認定のとおり、第一引用例および第二引用例(いずれも本願発明の特許出願前に頒布された刊行物であることは、原告の明らかに争わないところである。)による公知事項から、容易に推考しえられるものと認めるを相当とするから、本件審決には何らの違法はなく、原告の主張は理由がないものというほかない。
(むすび)
三 叙上のとおりであるから、その主張の点に判断を誤つた違法があることを理由に本件審決の取消しを求める原告の本訴請求は理由がないものとして、これを棄却する。
(三宅正雄 土肥原光圀 武居二郎)